Aug 31, 2011

「本当はナンバーワンになりたいのか?」問題

来月の山形国際ドキュメンタリー映画祭に、行こうかどうか迷っている。
行くなら7泊くらいしないとだめだが、少なく見積もっても移動費、宿泊費、飯代で6万くらいはかかりそうだ。
で、短期のバイトをネットの求人サイトみたいなとこで探していた夜。

「働きたい時だけ働いて、ガッツリ稼ごう!」
「自らの頭で考える人を募集!」
「あなたの個性を存分に発揮!」
「スキルアップが望める仕事です!」

みたいな文句が並ぶ。
なんて素晴らしいんだ。不景気、不景気と皆言うが、ネットを使いこなして求人サイトを覗けばコレだ。
ハハ、阿呆らし。ちょっとネットを使いこなしてみればほうら見ろ。素晴らしい仕事がこんなにたくさんあるではないか。
どの募集に出ている人たちも溢れんばかりの笑顔。笑顔。笑顔。
どれ、こんな事実を私の愚鈍な友人で、いつも仕事が仕事がといって暗い顔をしておるあやつに教えてこましたろ。
こんなに、素晴らしそうな仕事が世の中には溢れているって事をさ。
ああ、自分は先進国日本に生まれて良かった幸せ。


嘘である。


正しく書きなおしてみよう。
「働きたい時だけ働いてガッツリ稼ごう!(※いつでも切れるバイトを増やして社員を減らせば弊社に利潤がでますので)」
「自らの頭で考える人を募集!(※但し、業務の社会的意義や、倫理などについてはあまり真剣に考えないで下さい)」
「あなたの個性を存分に発揮!(※但し、会社の規程の枠内でのみ。髪の毛は黒く、短めが望ましい)」
「スキルアップが望める仕事です!(※本当にスキルのある方は初めから正社員として各社に入社しておりますが)」


この求人募集に書かれている言葉とイメージは、ほぼ、嘘ではないか。
何故、これほどまでの嘘を大っぴらに書いていて許されるのか。公共広告機構みたいなとこに怒られないのか。
私は憤慨した。苦虫を噛み潰した顔をしながらウイスキーを飲み干した。
余りにグラスを持つ手に力が入ってしまい、ひびが入って、ガラスの破片が指先に突き刺さり、血が滴ったウイスキーを、飲み干した。


嘘である。


そんなに怒ることはない。だって、ここに書いてある言葉と、イメージは、その事を意識することもなく
「嘘である」と、認識しているからだ。大抵の人は。
よく考えると、不自然にも。



ついでにこんな歌詞が、日本では爆発的人気になったりする。
「ナンバーワンにならなくていい 元々特別なオンリーワン」
そうか、日本人ってのはみんな、「オンリーワン」な存在を認めているのだ。
競争社会など日本人は嫌いで、誰に勝つとか負けるとか、嫌いなのだ。
個性を認める国民性。ユニークな人間を認める国民性。みんな、そのままでいいんだ。
Peace!
We are all one!素晴らしい。
こんな平和で寛大な精神を持つ、日本人として生まれて育ってこれて良かった幸せ。


嘘である。


どうも世の中を見回すと逆である。
社会に適応していく人間は、どちらかというと、無個性、無主張、無思想、無批判、無関心、無知。
流される人ほど適応していく。流されない奴は適応に手こずる。
なんで「ナンバーワンにならなくていい 元々特別なオンリーワン」って歌詞が大好きなのに、
皆東大に入りたいのか。東大卒を凄いと言うのか。1流企業に勤めている人たちを凄いと言うのか。
てゆうか、「ナンバーワンにならなくていい」のだから、企業に1流も2流も3流もない。学歴も一緒だ。

この日本人の捻れた感覚はどこから来たのか。それは歴史的にもそうであったのか。それとも最近の事なのか。

「ナンバーワンにならなくていい 元々特別なオンリーワン」
という歌詞を、国民の大半を占める人たちが「素晴らしい」と言う。それは素直に言っているように思える。
でも、同時にその大半を占める人たちが、実社会では「オンリーワン」を嫌っているように感じられる。
「オンリーワン」は、なるべく排除しようと動いている気がする。
自分が「オンリーワン」にならないように、日々努力している気がする。




この国の国民は分からん。
嘘を氾濫させすぎて、広告も、メディアも、人間関係も、経済も、政治も、嘘の上でしか回らないようになってしまったように見える。嘘を氾濫させすぎて、それが嘘であったかどうかも認識せずに生きている気がする。

そして、野田って、誰だ?




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