Sep 20, 2011

修了作品上映会から3日ー気持ちの整理と、週末の備忘

先週の16日金曜日に、2010年度映画美学校ドキュメンタリーコース初等科の修了作品上映会があった。
オーディトリウム渋谷という映画館で、同期たちの作品も含め4作品が上映された。

・糸とともに〜「さをり織り」たて糸づくり・織り・仕立て〜
・Globes:
・浜辺の巨大生命体へー大人の科学の挑戦ー
・MAKING of MANGA

この4作品が上映され、一つづつ講評して頂いた。

各作品の前に、まず代表者の簡単な挨拶があり、全ての上映が終わった後、山上徹二郎さん(シグロ代表・プロデューサー)、山崎裕さん(ドキュメンタリージャパン前代表取締役、カメラマン)、筒井武文さん(主任講師・監督)との3名での講評となった。


ここに詳細に書くことが出来ないほどの(それは、心理的に未だという意味で)、厳しい講評だった。あんなに張り詰めた空間を味わったのは久しぶりだった。劇場内の空気が「ピーン」という音を発しているように感じられた講評の1時間半。その場は「作り手」としてのガチの場であり、そこに一切のお世辞も、一切の馴れ合いも許されない場となった。

「糸とともに…」と「Globes:」に関しては、作り手としての態度や姿勢そのものが厳しく問われた。
「浜辺の…」に関してはF君のカメラワークがやはり是枝さんと同様に山崎さんから絶賛された。

3日経った今になっても、自分が関わったものではない作品の講評について、自分の意見でここに書けることはほとんど無い。が、一つだけ確信を持って書けるとすれば、山上さん、山崎さんが述べていた事は(これは以前の是枝さん、諏訪さんの講評でも同じだと思うが)、「自分には十分に理解出来た」という事だ。

約1年間ほど、「カメラとマイクの接続の仕方」みたいな、本当に基礎の基礎から映画作りというものを学ぶ苦楽を共にしてきて、その作品制作過程の紆余曲折を知っている同期の一人としても、あそこまでの酷評を聞いて、擁護したいとの気持ちが出たが、内容を真剣に聞いていて「それは違う!誤解だ!」と、真正面から対抗出来る事は、自分には無かった。プロデューサーとして、またカメラマンとして何十年と勝負してきている「プロ」達の講評の凄み、「作品」として何かを表現して世の中に出すということへの真摯な姿勢。尊敬する事しか無かった。

それが、本当に正直なところだ。
観客の前に「完成された作品」として出すという事。それをもっと考えろ。と全員、言われた気がする。


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その後の備忘録。

【金曜】
上映会後、何人かの人たちに声をかけてもらい、色々と話したりする。自宅に戻り、ツッチーと41氏とさとと飲む。
1時頃にさとが就寝。5時頃に41氏が就寝。そして11時頃まで、ツッチーと話す。

【土曜】
起床したら15時過ぎ。ダラっとする。夜飯にうどんを食いに行く。山上さんと山崎さんから言われた事を頭の中で整理する。41氏はもう一泊。「人生を背負う」という事は、どういう意味か。それは軽々しく口に出来る事なのか。などについて話す。今の自分に正直にあるしかないと結論する。

【日曜】
また15時頃起床。41氏帰宅。ダラっとする。スーパーに行く。唐揚げを食う。再度、色々と講評の事を考える。

【月曜】
基本はダラダラしながら、多少色々と整理がつく。やはり映画ではなく、今は社会と世界を見たいと思う。自分に圧倒的に足りないものは「長い目でものを見て考える」素養だろうと思う。映画が出来て100年とちょっと。映画の枠内だけで物事を考えていると思える言説が多すぎると感じる。腰を据えてじっくりモノを見る覚悟が自分には必要だと思う。「今」に敏感でいるために、ハイエナにはなりたくない。「今」の問題を、人間が抱える問題の普遍へと導く事が、きっとドキュメンタリーという表現には出来るはずだ。

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「MAKING of MANGA」の講評に関して。
メモしていた事をここにも備忘として書いておく。全体的に好意的な意見だったのでホッとした面もあったが、自分では一切気づいていなかった鋭い指摘を幾つか頂けて本当に良かった。


・山崎さん
「構成が、一年で何故ここまで見せられるのかというくらいに“変に”上手い。(まとまりすぎであまりそこが好きになれないというニュアンス含め)」
「撮影と構成が一つの方法論として一体的になっている。その設計が見事」
「ラストの作り手と被写体の共犯関係をバラしてしまうというカットは個人的に好きではない」
「テクニックと漫画家の人間とを見せていく構成のバランスが良い」
「執筆のテクニックを即物的に撮りすぎている面があるかもしれない。ストレートに執筆ではない、もっと漫画家自身の肉体の変化のようなものを現場で発見する目が必要だった。それが出来るかどうかにドキュメンタリーはかかっているのでは。そこに何かもう一つあったのでは。

・山上さん
「ものを生み出す人の苦しみと喜びが垣間見えた」
このような被写体との出会いは奇跡的で、一生にそう何度もあるものではない。その意味で、2作目をどうするのかを聞きたい。ドキュメンタリーを撮る事の幸せと不幸に出会ってしまったという事を自覚して欲しい。撮れてはいる。これからもこの被写体を撮り続けるべきかもしれない。その覚悟はあるか。その質問が出来るという意味では、一定の評価は出来る
「音の構成は際立って良かった分、もっと映像から自由になっても良かったのでは」
「ドキュメンタリーを撮るという事は、人生を背負うことに近い行為だ」

・筒井さん(?)
「出来るまで作品として、よく出来ている」
「対象との関係性の変化がない。対象との距離感の一様さから、ある種の馴れ合いが感じられる」
(筒井さんのコメントに関しては、内情を知った上(最初のシーンの撮影が時系列的に最後であること)での厳しい批評だと受け止めた)


加えて、上映会終了後、先輩たち(主にOさんとMさん)から頂いた指摘。

「漫画家のナレーションで説明されてしまうところで、幾つか好きになれない部分があった。特に「画で見せなきゃいけないシーンもあるから…」のところは、あれこそ画だけでいくべきでは」
「もっと音だけで色々出来る部分があったのでは」
「作り手が今、何故これを撮るのかという切実さの部分では、一番伝わった」
「電車が唐突に入る編集と、ラストのカットバックの編集がラジカルで好きだった」
「編集長などのシーンはいらなかったのでは。もっと執筆だけで押せたのでは」


更に加えて、漫画家・土屋雄民の指摘も(実は彼の指摘は他の作品についてもかなり本質的で勉強になった)
タイトルと内容が合わない。MAKING of MANGAというタイトルならラストカットは間違っている。あのラストカットは漫画家土屋に寄りすぎている。タイトルは重要。
足の執筆シーンが2カットあるが、1カットで良かったのでは。執筆シーンでもっと削れるところがあったはず(!)。

更に、一つしか覚えてないが、友人でサラリーマン役の41氏のコメント。
「ラストのカットバックのマンガのシーンは何故無音なのか。あそこに海の場所の音が入ってても良かったのでは」



こう、言われた事を整理して書いてみて、山崎さんと山上さんからの指摘が重く、的確で、愛のあるものだったと再認識している。

山崎さんがおっしゃった「現場で発見する目が足りない」という指摘。その通りだったと思う。内藤カメラマンからも同様の指摘を以前受けている。MAKING of MANGAはラッキーが重なって、予め撮りたいと思っていたものが撮れた結果、あまりに最初の構成に忠実になり過ぎたと今では思っている。「撮らなければいけないもの」を撮ることでいっぱいいっぱいになり、現場での発見が疎かになってしまった事も事実。そのため、「構成と撮影の設計」がこちらの思惑通りにいったところがあった。そこが成功した部分でもありながら、ドキュメンタリーとして大切なものが何か今一つ足りないと、きっと評価されたのだろうと思う。これは重く受け止める。

山上さんから言われた事。嬉しくて涙が出そうになった。客席に座っている自分に対して目を見て舞台上から話しかけてくれた山上さんの誠実さには感動した。山上さんが終始言っていた「覚悟・姿勢」については、自分は持てていたと自信を持って書けるだろう。その上で、非常にズシリとくる宿題を頂いた気がしている。




※講評の際、もっと批判的な意見があったかもしれない。基本的には、自分があっと思った事をメモしていたので…そしてキツイことは基本的に忘れてしまうというダメな性格のため…

※あの上映会に来てくれた一般の人で、ガギグゲキッコを手にとってくれた人は何人いるのか…3人くらいはいて欲しい…




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4 comments:

  1. 『MAKING of MANGA』拝見しました。私もラストシーンは不要だと思いましたが、作品そのものはドキュメンタリー映画として観るに値する佳作でした。

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  2. 加藤さま

    驚いております!お久しぶりです。そして、このBLOG見てくださっていたのですか…お恥ずかしい限りです。。
    上映会いらして下さっていたのですね。すいません、知りませんでした…わざわざ拙い4作品を観ていただき、ありがとうございます。ラストシーン、評判悪いです、ずっと(泣)。是枝さん、諏訪さんも好きじゃないっておっしゃってました。。「ドキュメンタリー映画として観るに値する佳作」なんて、誉めすぎです。。まだまだ、です。が、とりあえず今は素直に喜んでおきます。

    改めて、上映会に足を運んでくださって、またコメントも頂いて、ありがとうございます。山形でどこかでお話出来たら嬉しく思います。

    藤原監督の「無人地帯」フィルメックス決まったとのお話。おめでとうございます。


    川上

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  3. 高評価は素直に喜んだ方が、(ひとまずは)宜しいのではと思います。長期的には、厳しい批判も受け入れるべきなのでしょうけれど。

    ヤマガタには全期間行くつもりですので、あちらでお会いする機会も多々あるかと思います。時々夕食を食べるおでんの店があるので、良かったらお連れします。

    川上さんのお言葉には深く感謝します。ありがとうございます。『無人地帯』に関しては、映画そのものがどのように受け入れられるか以前に、藤原監督がいつもの調子で友人知人と反目することにならないようにと冷や冷やしているところです(笑)。

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  4. はい。おでん屋さんいいですね。是非お願いします。
    藤原監督、twitter上でしか知りませんが、ちょっと怖いです。。笑。なんとなく色々とお察し致します。

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