Jan 18, 2009

ワンカップ大関



ある中年パンク作家が,「長幼の序」を世の中に浸透させようとした結果,行きたくもないLAでテレビ番組の撮影をする破目に陥り,喫茶店で得意げに「僕,アメリカン!」と言って悦に入るような外道なテレビクルーの言動・行動にホトホト嫌気がさしてしまう.チャールズ・ブコウスキー.

みたいな小説を読み終わって,勿論その小説というのは町田康,「真説・外道の潮騒」な訳だが,かようなパンク小説,というか町田康節,というものを読んでいると唐突に,かつ無性にコカコーラを飲みたくなった.なったのでコンビニへと車を走らせた.

車にキーを差込,ぶるぶるぶるとエンジンがかかった瞬間に左手でコントロール用の棒を「D」と書かれた部分にシフトさせて発進すると,窓が凍っていて一寸の間怖いなあと思っていたが,そんなことは全く関係ない.

コンビニに入って,コカコーラとカルビーサッポロポテトダブルバーベQ味を手に取り,レジに向かったところ,レジには土木作業者と思わしき目つきの鋭いおっさんがワンカップ大関を持ってコンビニ店員に何やら文句をつけていた.

何を土曜日の深夜に便利店で怒る必要があるのだろう.ああ,システムに搾取され続け心が荒んでいるのかな.悲しいことだな.などと思案しながら後ろで待っていると,私の存在に気づいたその目つきの鋭いおっさんは,

「おぅ,何か文句あんのか兄ちゃんおぅ!」

と,まあ冷静な話し合いは出来そうではない威勢で話しかけてきた.話しかけられたからには,答えない訳にはいかないというのが大人の男性の道理である.
ああ,この人には愛情が足りないのだな.孤独なのだね.つらいよね孤独.理解して.

「いやあ,実にうまそうな酒だなあと思って.」

と言ったところ,

「兄ちゃんも飲んだらええと違うか!おう.おう.」

と言って,ワンカップ大関をもう1つ取りに行き,レジを済ませてから私のポケットにそれを押し込み,上機嫌になり出て行った.



そのワンカップ大関を飲みながら,今,文章を書いている.
ワンカップ大関は,特に旨くもなく,かといって,不味くもない.












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