Jul 8, 2010

「サマーウォーズ」について(長文注意!)





筒井康隆のジュブナイルSF小説、「時をかける少女」(1967年)はあまりに有名な作品だ。有名なだけあって、元来SFにほとんど興味のない俺もタイトルは知っていた。そんな有名小説が2006年にアニメ映画化された。監督は細田守。制作は最近「四畳半神話大系」でもノっているマッドハウス…

とまあ、こんな書き出しをしてみたものの、俺は細田守監督についてもマッドハウスについても全然知らない。アニメ界隈の常識も全然知らない。だから、細田論的に「サマーウォーズ」の位置づけを書く事も出来ないし、マッドハウスの作画がどう、とかいう事も出来ない。そもそも、今回久しぶりにこのブログに文章を書こうと思ったきっかけは、俺の名古屋時代の数少ない友人2名(205and41, sakuramps)がtwitter上で昨夜激しい「サマーウォーズ」批評をやりあっていて、野次馬的にじゃあ俺も観てみるかな、と思って観た「感想」を書こうと思ったのである。

なので、基本的に、以降の感想は「サマーウォーズ」を観ていない人にとっては読んでも意味不明であるだろうし、時間の浪費である事を、予めここで断っておこう。

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さて、特にまとまった文章の流れが今現在、出来上がっている訳でもない。主に個人的に感じた事をまず書いて、次に昨晩のtwitter上の流れを見返して、思った事を書こう。

最初に、「好き」か「嫌い」かを書こう。俺はまあアリじゃない。位の力加減で「好き」だった。

その理由は、このアニメ作品は現代に必要なテーマを分かり易く、幅広い観客層に提示する、同時に商業的にも成功を目指す(これ重要だと思う)。メインターゲットは10代後半から20代前半だが、家族で見ても大丈夫なように作る。くらいの位置づけで制作されているものと思われ、それに成功していると思うから。

この作品から俺に最も残ったキーワードは「繋がりと断絶」「安西先生」「励ます人」の3つだ。
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まず、作品の世界観。これはまあ当たり前の話だがアニメでフィクションなので(アニメにはそもそもフィクションしかないが、更に言えば映像とはドキュメンタリーを含め全て原理的にフィクションなのであるが)、OZが生活上で電子化出来る行動全てを行える仮想空間となっており、またインフラや国防権限のアカウントも、全てノッペリと同様に管理されている(アカウント間の序列がない)。こんな危ないアーキテクチャを構築するSEなんて存在する訳ないよ、バカバカしい。等と批判するのは、文字通り馬鹿げている

別にこの作品の制作サイドが「リアリズム」を表現の目的としていない事は、火を見るように明らかなので、こんなOZみたいなのありえねー!とか言っても暖簾に腕押し。意味がないのだ。重要なのは、適度に「ありえそう」だなと思えるくらいの「リアリティ」であるから、最初のOZについてのチュートリアル動画は非常に良く出来ている。OKOK。問題無し。
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この作品の最重要人物は、まあ当たり前だけどおばあちゃんで、おばあちゃんキャラの核は「あきらめない」と「励ます」と「皆で一緒にごはん」の3つであり、これがストレートに監督が観客層に伝えたい事であるため、作品としてのテーマは超分かりやすい。

まあ、「あきらめたらそこで試合終了」だなあーと思って「安西先生女版」だなあーと思った。
「励ます」というのは、これはちょっと病理を感じてしまった。このおばあちゃんの励ましによって、40代の息子達も主人公も積極的に動き出すという描写。あーこれほどまでに現代人は「誰かに励ましてもらいたい」のだな、と。ちょっと異常なほど「確信」が持てない時代なんだなーということを示して「しまって」いる。
「皆で一緒にごはん」は、まあ、語る事はないかな。要するに「家族の絆って大事だよね!」というアレであって、商業ベースの作品では入れておくと便利なテーマなので入っているだけだから。当たり前すぎて面白みは無い。
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あと、主人公とヒロイン以外の登場人物では、内気でヘタレなカズマと、一番ガキなワビスケがいる。共に、現代の闇を示すキャラである。
カズマは周りとの接触を怖がり、ちょっと負けるとキョドってすぐ泣いて諦める。まあ、要するに「今の若者」程度のキャラ。それが絆と連帯の力を知って最後には外に出る(妹に興味を示しだす)という分かりやすい「成長」だ。
ワビスケは(感情的に最も嫌いなキャラだが)、ただのガキであり、おばあちゃんの愛情が欲しくてダダをこねて間違って、その間違いをおばあちゃんの死によってようやく気づいて丸くなる。てだけのキャラだ。残念だったのはワビスケが何故一家と疎遠になったのか、なぜおばあちゃんからの承認をそこまで求めるのか、という背景が一切描かれていなく、薄くなっているとこ。かっこ良い感じで出てくる割に何もないキャラ。
一つだけ、重要なのはある種「超人」的設定のおばあちゃんの弱みをワビスケが引き出すシーン。おばあちゃんの金でラブマシーン設計をやれたと指摘しちゃうとこ。あそこでおばあちゃんが「人間」になる。ワビスケは最も遠くて最も近いんだよね。おばあちゃんにとっては。その辺がうまく描かれているシーンだった。
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「繋がりと断絶」
これが上手く描けていたので俺はOKだなとなった。「繋がり」ってのはまあ家族、親族の繋がりであったり、主人公とヒロインの(若さゆえの甘酸っぱい笑)繋がり(特にヒロインが泣いて手を繋ぐシーンでグッと主人公が他人ではなくなる瞬間)とかね。この辺は上手いし分かりやすいし良かった。
「断絶」ってのは、「ネットの人」と「リアルの人」の断絶であったり、男と女の断絶だったり。前者の断絶が上手く描かれていて面白かった。一族殆どはOZ内での大事件やら、ラブマシーンの恐ろしさやらに対して一貫して無理解なのが良かった。
で、OZ内の崩壊=物理世界の崩壊って構図を理解してるのは主人公、カズマ、ワビスケ、かろうじてヒロインで、この作品のターゲット観客層が、この4人の誰かに感情移入出来れば成立するように作られていること。これが商業的成功を狙っていて、しかも成功していると言った理由。これが上手い。若者層はこの4人の誰か(もしくは複数でも)に感情移入して見るんだろうし、おっさんおばはんはおばあちゃんの言葉に涙するんだろうし。まさに、「大衆」を狙って皆が脱落しないで見れるように描かれている。

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俺が思ったことは以上。以下は205and41(以下41)とsakuramps(以下島)のやり取りについて。

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まず、最初に両者に言っておきたいのは「映画」を見るときには、「映画」だけに集中しましょうよ。という事。見ながらtwitterやるってのは、正直あんま良くないよなーと思う。なぜ映画製作サイドが劇場で見て欲しいのかというと、画面や音響もあるけど、「一から終わりまで作品に没頭出来る体験」が劇場にあるから。だから家でDVDやらサイトやらで見るときは、なるべく没頭してみないと、製作サイドに、まあ失礼かなと。
ま、いんだけどさ!いんだけど、蓮實重彦に怒られるからさ。

で、41の批判的ツイートは、ほぼつまらないもので、瑣末な描写が気に食わないとか、キャラがムカつくとか、世界観の設定にリアリティがなくて嫌、みたいな内容だったので、まあ、これは島に怒られてもしょうがないかな、と。まあ、ひねくれて観すぎでしょう。どーでもーよーって批判が多かったかな。これは多分マインドセットの問題で、もし俺がこの「サマーウォーズ」って作品がアニメじゃなくて、しかも「リアリズム」を追求しているような文脈で作られていれば、41のような批判ばっかになるだろうけど、そもそも製作者の意図がそこにはない事が10分くらいで把握できたので、ほぼ全て的外れの批判になってると思った。多分、監督的に言えば、「はぁ…そうですか…」って感じの批判だな、と。

あと、それに対する島の憤りも、なんか弱いよね。基本的に憤りは理解出来たけど。
かなり俺的には自信を持って、上に書いた「的外れ批判」になってる、って言えるので、それを一言、指摘すればそれで済む事なのかなーと思った。あと、細かい演出にこだわってるようだったけど、その辺は俺的には意味がわかりませんでした。朝顔なんて一切わからなかった。何、朝顔ってそんなに意味持って描かれてたの?あと、ヒロインの別離の哀しみのシーン。あれは別にアニメの演出として上手いとは全然思わなかったなー。ベッタやなぁー!て感じだった。昔っから顔での表現を手でやるってのはたーっくさん実写であって、それを単にやっただけっていう超ド定番の演出だと思うよ。

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以上、結論としてはラストシーンでチュッてするとこで、ニヤっとしちゃったので、それだけで、まあアリかなという感じでした。推敲は致しません。長文失礼致しました。











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