アウトローになれない,
中産階級の子供達は,
安定した生活だけを求めて,
ストレス満点の,
つまらない灰色生活をおくるのです.
俺の周りの人達に世捨て人はいない.
皆が全うに生きている.
偉い.とっても偉いと思う.
世捨て人になる可能性が一番あるのは,もしかして俺か?俺なのか?
みんな,よく全うに生きられるなーと思う.
やっぱ,俺は奇人変人の類なのかもしれんな,と思う.
「人生に悩む」のが小学生からの日課で.中学生ではどん底に落ちていたし.
こんな「フツー」に生きられない俺を支えてくれる婚約者と両親と友人に感謝しながらも,
パンクでアウトローでダメになりたいという衝動が燻る毎日.
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ヒロコちゃんはいつも何を考えているんだろう.クラスのメイングループにも,マイナーグループにも所属しないヒロコちゃんを見つめながら,いっつもそう思っていた.特別かわいい訳でもないし,特別ブスな訳でもないヒロコちゃんは,いつも青か紫のTシャツを着て,一生懸命に黒板を写している.何故か毎日その姿が気になってしょうがなかった.
ヒロコちゃんと初めてしゃべったのは5年生の4月.係り決めで,たまたまやりたい事もなく流れで決まってしまった飼育係で一緒になったヒロコちゃんは僕を見て,
「聡くんって何だか暗くない?」
って言った.
確かに僕はそんなに明るくないし,運動も勉強もそこそこだ.でも初めてしゃべったのにそう言われると少しムッとしてしまう.
「そんなことねえよ」
そう言って,続く言葉が見当たらずヒロコちゃんをジッと見つめた.その時ヒロコちゃんは笑ったんだ.楽しそうじゃない笑顔で.あの,笑顔.
地元中小企業の技術営業マンとして仕事をしている聡は,小学生時代の回想に耽っていた.入社3年目,最近では製品知識も身についてきて,ノルマ達成とまではいかないが,売り上げ成績は店舗のビリではなくなった.上司や先輩とのコミュニケーションも,良くはないが特別悪くもなく.毎日汗をかいて働いている.出世なんて出来そうにもないが,それなりに自分の会社でずっと働く決意が持ててきている.
昨日,ヒロコちゃんと久しぶりに再会した.
と言っても実際に会ったり話したわけではない.ニュースで見たのだ.
ヒロコちゃんは死んだ.43歳無職男性に殺された.テレビでは大人のヒロコちゃんの写真が流された.
あの,笑顔.楽しそうじゃない笑顔.
聡は2年前から吸っているタバコの火を消し,ぼんやりと天井を眺めている.
明日こそは1件,契約を取ろう.
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